わたしたちの本棚

2014/07/18

わたしたちの本棚

『GIVE&TAKE』―「与える人」こそ成功する時代
/ アダム・グラント著

新しくはじまったコラム「わたしたちの本棚」。
初回となる今回は、アダム・グラント著の『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)を取り上げます。

本書のなかで、著者は一貫して「与える」ということの重要性と可能性について実証的に論じています。ひとつにはソーシャルメディアが生まれ、つながりの密度がより濃いものになったことで「与える」ことの影響が見えやすくなったことが挙げられます。そうして時代が大きく変わろうとしている現在、企業はどのような姿勢で時代と対峙していけばよいのか。本書で語られている「ギバー(giver)の戦略」にはその課題に対しての大きな示唆が含まれているように感じました。

読み進めるうちに頭の中に浮かんできたのは「星の王子様」の物語。例えば、本書にはこんな一節があります。

「人間は自分の時間、エネルギー、知識や情報を投資して誰かを助けると、相手がそれに値する人だと必死で信じようとする。」

そして、こちらが「星の王子様」の中で出てくる言葉。

「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ」

いかがでしょう?わたしにはどちらも同じことを言っているように思えたのです。つまり、見返りも求めずに与えるということを続けていると、与えている対象が愛おしいもの、かけがえのないものに「なる」と。

わたしはいま、一匹の猫を飼っているのですが、毎日餌をやり、飲み水を換え、うんちを処理し、遊び相手をし、部屋が暑ければ冷房をつけ、寒ければ暖房をいれてあげます。そうした日々を積み重ねていく中で、なかなか言葉では言い表しにくい感情をこの猫に抱いている自分がいることに気づくのです。

それを「愛情」と呼んでもみてもいいと思える、そういう類いの感情です。もちろん、この猫がお金を稼いできてくれたりするなんてないですし、機能的にいえば価値は特に与えてくれるわけですが、わたしにとってかけがえのない存在であることには間違いないのです。

話を猫から本書に戻します。見返りを求めず与え続けるなんてことをしたら、大損食らうのがオチだよと思うのが多くの人の反応かもしれません。しかし、よくよく考えてみると、そもそも、かけがえのないものを見つけることができるって、大損どころかかなり価値のあることだと思うのです。

ここでようやくこれからの時代と企業がどう対峙していけばいいのか、という話に接続する準備が整いました。まとめます。これからの時代、企業の戦略には大きく2つのことが重要になってきます。

1つは、お客様にとって価値あるモノ・情報・体験を与え続けることで、自分たちにとってのかけがえのない存在を企業側が見つけていくこと。

もう1つは、お客様から与えてもらうことによってお客様にとってのかけがえのない存在になっていくことです。

どちらももうすでに一部の企業を中心にその流れははじまっています。

前者は、近ごろよく耳にするようになったインバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングなどといった顧客になりうる人たちにとって役に立つ情報を「与え」続けることで購入につなげていこうとするマーケティングの姿勢に現れています。そして、後者は、コミュニティの形成による顧客ロイヤリティ向上を目指す流れにみることができます。

無印良品は自社のマーケティング戦略を「最愛」の戦略と置き、顧客に愛される企業を目指しています。このように、企業と生活者がお互いにかけがえのない存在となるような関係構築を目指すことが、これからの時代の企業戦略のキーとなりそうです。

従業員、パートナー、顧客といったあらゆる関係者を巻き込んで、共通の価値観でつながったひとつのエコシステム(=生態系)を形成していくための試みは、これからさらにスピードを上げて広がっていくことでしょう。そんな中において、「与える」という概念はますます重要度を高めていくのではないかと、私は見ています。

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