2014/07/31

わたしたちの本棚

競争優位の終焉 / リタ・マグレイス著

世の中の変化のスピードがどんどん早くなっています。ビジネスの世界にもたくさんの大きな変化が起こっており、その一つが「既存の市場セグメントの喪失」だと言われています。今やビジネスは競合企業との単純な差別化を争う時代ではなくなりました。業界、地域、価格帯といったこれまでのセグメントが急速に消失しつつある現在、オープンフィールドに立たされた企業は否応なく経営戦略の舵取りを迫られています。

確かにここ10年ほどで起こった市場の変化は、これまでとは様相が異なっています。街角の本屋は姿を消し、若者はCDを買わなくなり、カメラは携帯電話の機能の一つとなり、映画はタブレットで気軽に鑑賞でき、入れたてのおいしいコーヒーが缶コーヒーよりも安くコンビニで買えるようになりました。これらの変化はすべて業界の垣根の向こうからやってきたものです。思わぬところから現れた大波になす術もなく飲み込まれてしまった、そんな印象を拭えません。

『持続的な競争優位の時代は終わりを告げた。』著者はそういい切ります。そして、『変化の激しい現代においても長期的な成長を続けるいくつかの企業たち(本書では『例外的成長企業』と呼ぶ)は、戦略の新たなシナリオを手に経営を進めている。すなわち、持続的な競争優位を求めるのではなく、フィールド全体を見渡しつつ、短期的で一時的な競争優位状態を絶え間なくつくり出す仕組みを構築している。』と述べています。

さてさて、ここからはボクの戯言ですからお許しを。ボクは他人の家にいくといつも感じるのですが、家にはそれぞれリズムのようなものがありますね。人の暮らしは習慣の積み重ねでできています。リズムとはその習慣そのものであり、また、習慣を繰り返す際のテンポのようなものです。お父さんの帰りを待って一緒にごはんを食べる家もあれば、先に食べちゃう家もあります。どっちがよいかではなく、そのリズムが家族という組織を成り立たせ、その家族らしさを生み出している。

企業も同じです。組織は生き物であり、それぞれが独自のリズムを脈打っています。多少の外的な環境変化があろうとも、組織のリズムというものはそうそう変化するものではありません。人も組織も習慣の生き物ですから、リズムが急激に変わっては生きていけないのです。なので、ボクらはお客様企業をお手伝いするときに、その企業のリズムをとても大切に考えます。リズムを肌で感じ、リズムに乗って、リズムを活かしながら、外部とのコミュニケーションを設計していく。そう考えると、「企業らしさ」というものの正体は、案外この「リズム」にあるのかもしれません。

さて、すべての企業は環境適応業であり、事業環境の変化には敏感に対応すべきであることは言うまでもありません。例えば、大正から昭和にかけて人々の暮らしが急速に洋式化していく時代の中においては、下駄屋は履物屋になり、さらに靴屋になっていかなければ生き残れるはずもありませんでした。もしそこを見誤れば、下駄屋どうしで競争しているうちにあっという間に市場から追い出されてしまう。おそらく同様に現代もまた激しい変化の時代であり、すべての企業は今まで以上にタイトで大胆な舵取りを迫られているのは間違いありません。

ただここで留意してほしいことは、「リズムだけは変えられない」ということです。変えられないものをムリに変えようとするとそこに歪みが生じ、時に致命的な傷に至ります。いくら崇高な「理念」や「ビジョン」、また練り尽くされた「戦略」や「分析」があろうとも、それを行為に変えているのは「現場」の小集団であり、一人ひとりの人間です。そして、その「現場」を動かしているのは、実は理念でも戦略でもなく、まるで人体における呼吸や鼓動のような、その組織固有の「リズム」に他なりません。

そのリズムをきちんと理解し、それに沿った戦略やシナリオを構築することは、外的環境の激しい時代だからこそ余計に求められているのはないかと、こんな本を読んでもボクはやっぱり思ってしまうのです。

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